定期接種化される帯状疱疹ワクチンQ&A:打つといい人、予防効果、副反応など
帯状疱疹は、過去に感染したのちに体内に潜んでいた水ぼうそうウイルスが、免疫力が低下したことで再び活動を開始し、痛みを伴う水疱で発症する疾患です。帯状疱疹発症後に長引く神経痛で悩まされる患者さんも少なくありません。今までは帯状疱疹に対するワクチンは任意接種でしたが、国の方針で2025年4月から定期接種化されることが決まりました。このコラムでは、定期接種化される帯状疱疹ワクチンについて説明します。
帯状疱疹はどんな病気?
帯状疱疹は、水ぼうそうの原因

帯状疱疹になりやすい人は?
特に、加齢がリスクで高齢者に多いです。50歳代以降にかかる人が多くなり、70歳代にピークに達します[1,2]。宮崎県で行われた研究において、帯状疱疹の患者数は、千人・年あたりの帯状疱疹の
帯状疱疹にかかるとどうなる?
帯状疱疹の症状は、ピリピリとした皮膚の痛みと
帯状疱疹に治療法はある?
帯状疱疹の治療法には、抗ウイルス薬があり、早期に治療することで
帯状疱疹を予防するワクチンには何がある?
現在、日本においては、「生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」)」と、「組み換えワクチン(シングリックス)」の2種類が使用できます。このうち「生ワクチン」は、接種は1回で費用は約8000円-9000円程度です。一方「組換えワクチン」は、2回接種する必要があり、費用は合わせておよそ約4万円-5万円程度かかります。定期接種の対象者については、これらの費用が一部公費負担となります。帯状疱疹ワクチンの目的は、帯状疱疹とその後の帯状疱疹後神経痛の
定期接種の対象者は?
帯状疱疹ワクチンは原則として50歳以上の人が打つワクチンです。一方、定期接種の対象者は50歳以上ではありません。国の会議で、対象年齢については、帯状疱疹の罹患者数が70歳代にピークを迎えることや、ワクチンの予防効果が時間経過とともに弱まること等が検討され、以下の通りに決定されました。
【帯状疱疹ワクチンの定期接種対象者】
- 65歳の人
- 60歳以上65歳未満で、
ヒト免疫不全ウイルス による免疫の機能の障害を有する人 - 65歳を超える人については、5年間の経過措置として、5歳年齢ごと70、75、80、85、90、95、100歳
- 101歳以上の人(令和7年度のみ)
2種類の帯状疱疹ワクチンの違いは?
定期接種とは別に、50歳以上であればどちらの帯状疱疹ワクチンも接種することができます。(免疫不全の人は18歳から組み換えワクチンを接種可能。)
【帯状疱疹ワクチンの種類と主な違い】
| 種類 | 生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」) | 組み換えワクチン(シングリックス) |
| 接種回数 | 1回 | 2回 |
| 接種方法 | 皮下注射 | 筋肉内注射 |
| 注意事項 | 病気や治療によって免疫が低下している人は受けられない | 18歳以上で免疫が落ちている人でも受けられる |
| 予防効果 | 帯状疱疹発症予防効果 帯状疱疹後神経痛の予防効果 |
帯状疱疹発症予防効果 帯状疱疹後神経痛の予防効果 生ワクチンよりも高い効果が続くとされる |
| 費用 | 約8000-9000円 | 2回合計:約4万-5万円 |
| 定期接種の助成額 | 各自治体のホームページなどをご確認ください | 各自治体のホームページなどをご確認ください |
生ワクチンは、1回を皮下接種、一方、組み換えワクチンは2ヶ月以上の間隔をおいて2回筋肉内に接種します。生ワクチンは免疫不全者には接種することができませんが、組み換えワクチンは接種が可能です。組み換えワクチンは帯状疱疹に罹患するリスクのある免疫が落ちている18歳以上の人にも接種することができ、その場合接種間隔は1ヶ月まで短縮できます。
予防効果はどれくらい?
生ワクチンと組み換えワクチンはいずれも「帯状疱疹の発症予防効果」と「帯状疱疹後神経痛の予防効果」が認められています。2つのワクチンは直接比較されていませんが、組み換えワクチンのほうが接種後年数ごとの発症予防効果は高いと考えられます[5,6]。
生ワクチンの効果
60歳以上を対象とした生ワクチンの研究では、接種後約3年間の調査において、帯状疱疹を約51%、帯状疱疹後神経痛を67%減少させます[7]。また、65歳以上を対象とした研究では、生ワクチンの帯状疱疹に対する有効性は接種1年後で38%、7年以上で21%、また帯状疱疹後神経痛に対する有効性は接種1年度で70%、7年以上で60%となっています[8]。
組み換えワクチンの効果
一方、組み換えワクチンですが、接種後約3年間の調査において、その有効性は、50歳以上の帯状疱疹に対しては約97%、70歳以上では約90%です[9]。70歳以上を対象とした研究では、接種後約3.7年間の調査において、帯状疱疹後神経痛に対するワクチンの有効性は約89%となっています[10]。最近の研究において50歳以上において有効性は10年時点で約73%と報告されています[11]。
気になる副反応は?
生ワクチンも組み換えワクチンも基本的には安全に使用することができます。ただし、生ワクチンは前述の通り免疫不全の人には接種することができません。組み換えワクチンの有効性は生ワクチンよりも高いものの、接種部位局所の反応が多いことがわかっています[12]。
国内で50歳以上の人を対象にした生ワクチンの研究では[13]、ワクチンとの因果関係のある重篤な副反応は見られず、ほとんどが接種部位の
70歳以上の日本人を対象とした組み換えワクチンの研究では[14]、最も頻度の高い局所反応としては注射部位の
おわりに
帯状疱疹の発症頻度は50歳代以降で高くなり70歳ぐらいでピークになります。一方で、ワクチンの有効率は年齢とともに低下します。定期接種対象の人はもちろん接種が推奨されますが、そうではない50歳以上の人や、帯状疱疹の罹患リスクのある18歳以上の人についても、帯状疱疹ワクチンを是非検討していただければと思います。
このコラムが接種の参考になれば幸いです。
4. 帯状疱疹ワクチンファクトシート第2版. 第61回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会
6.2025(令和7)年1月29日第60回厚生科学審議会予防接種 ・ ワクチン分科会. 帯状疱疹ワクチンについて
13. 岡田伸太郎ら. 50歳以上の健康成人を対象としたBK1303 (乾燥弱毒生水痘ワクチン) の免疫原性および安全性の検討 - 第III相, 単施設, 非盲検, 非対照試験 -. 臨床医薬 30 (11) 963-974, 2014.
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