せっぱくりゅうざん
切迫流産
妊娠22週未満で、胎児心拍は確認できるが流産となる可能性の高い状態のこと
1人の医師がチェック 5回の改訂 最終更新: 2021.12.16

切迫流産の原因は何がある?

切迫流産の原因は以下のようなものがいくつか考えられますが、原因不明である場合も多いです。感染や子宮頸管無力症など原因が明らかであり治療が可能である場合には、抗生剤の投与や子宮頸管縫縮術などが検討されます。

1. 感染(絨毛膜羊膜炎、細菌性腟症、頸管炎)

膣の中には通常、常在菌といわれる菌が存在することで膣内を酸性に保っています。しかし、何らかの原因で膣内の菌のバランスが崩れ異常な細菌が増殖した状態を細菌性膣症といいます。異常増殖した菌の全てが流産の原因になるというわけではありません。しかし、異常細菌が子宮のほうに広がって子宮頸管に感染していき、卵膜に達してしまうと絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)といった流産及び早産の原因となるような感染を起こす可能性があります。

絨毛膜羊膜炎は、子宮の収縮を起こすプロスタグランジンを作り、それによって子宮を収縮させるとともに子宮頸管を柔らかくさせたり、子宮の出口を押し広げるような役割を果たしてしまいます。また、炎症を起こした組織がエラスターゼという酵素を放出し、卵膜が破れやすい状態にしてしまうため破水を起こしやすくなります。

絨毛膜羊膜炎の診断は、出産後には胎盤を病理検査に出すことで確定されますが、妊娠中には母体の発熱がないか(38℃以上)、母体の頻脈(脈拍数が100回/分以上)がないか、圧痛(子宮を押すと痛い)の有無、膣分泌物・羊水の悪臭の有無、母体の白血球数の増加(≧15,000/μL)などの症状や検査結果で診断します。感染が原因と考えられる場合には、抗菌剤を投与し治療を行います。

2. 絨毛膜下血腫

絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)は、胎盤を形成する絨毛膜と子宮内膜の間に血液が溜まることをいいます。絨毛膜下血腫が切迫流産や流産の原因になることがあります。

絨毛膜下血腫は超音波検査を行うことで診断でき出現頻度は報告によって異なりますが、切迫流産と診断された人のうち4%から40%に観察できるといわれています。

絨毛膜下血腫があるとすぐに流産してしまうというわけではなく、ほとんどの場合に絨毛膜下血腫は吸収されて問題なく妊娠が継続できます。しかし血腫による刺激で脱落膜のプロスタグランジンの産生がさかんになり子宮収縮が増加したり、血腫が大きくなって胎盤の血流を阻害すると、流産に至るリスクが高くなります。

また絨毛膜下血腫が見つかった場合、血腫を小さくするような直接的な治療法は残念ながらありません。切迫流産で絨毛膜下血腫が見つかった場合には、ベッド上で安静にすることが流産の危険性を減らすと言われています。

3. 子宮頸管無力症

子宮収縮(お腹の張り)や出血などの自覚症状がないまま子宮口の開大や頸管長の短縮(子宮頸管の熟化)がみられる状態のことを子宮頸管無力症といいます。前回の分娩の際に子宮頸管無力症と診断されていた場合には、次回の妊娠で切迫流産、切迫早産のリスクが高くなります。また妊娠中に胎児異常や感染などを疑わせる様子がないのにもかかわらず子宮頸管の熟化が進行する場合も子宮頸管無力症が疑われます。

子宮頸管無力症と診断された場合には、子宮頸管縫縮術を行い子宮口の開大を防ぐことがあります。子宮頸管縫縮術を行う場合には入院して手術を行う必要があり、経腟分娩の前には縫った糸を抜糸する必要があります。詳しくは「子宮頸管縫縮術とは?」で解説します。

4. 子宮の異常(子宮の形態、子宮筋腫、子宮頸部円錐切除術の術後など)

子宮筋腫があるだけで必ずしも妊娠に影響するわけではありませんが、子宮筋腫のある部位や妊娠に伴う変性や感染によって切迫流産の原因となることがあります。ある文献によれば、粘膜下や筋層内に子宮筋腫がある人は、ない人に比べると流産率が高かったという報告はあります。しかし実際には子宮筋腫があっても問題なく出産されている人は多く、妊娠中に子宮筋腫が見つかっても治療を行わないで自然に経過をみることがほとんどです。

子宮の形態に異常がある人の場合には、通常の子宮に比べて耐久できる容積が少なく切迫流産のリスクが増します。しかし子宮の形態に異常がある場合でも、約半数の人は正期産で出産をすることができているため、流産を何度も繰り返した経験などがなければ妊娠前は治療はせずに様子をみることがほとんどです。妊娠中には、切迫流産や早産の兆候がないかを妊婦健診で確認しながら経過をみていきます。

また、妊娠前に子宮円錐切除術などの子宮頸部の治療をしており妊娠時の子宮頸管長が短い場合には、妊娠前から子宮頸管の長さが通常よりも短いため、妊娠12週0日以降の後期流産のリスクや早産のリスクが上昇します。そのため、子宮頚部円錐切除術後の場合には子宮頸管長のさらなる短縮など切迫流産の兆候がないかどうかを経腟超音波検査を行って慎重に観察していきます。子宮頸管長の短縮がある場合には、子宮頸管縫縮術が検討されます。以前は、子宮頚部円錐切除術後の妊婦さんには子宮頸管長の短縮がみられなくても子宮頸管縫縮術が予防的に行われることもありましたが、子宮頸管縫縮術を行うことが逆に早産を誘発する可能性があるという報告もあったため現在は子宮頸管の短縮が確認される場合のみに行われることが多いです。

参考文献
Am J Obstet Gynecol. 2008 Apr;198(4):357-66.
J Reprod Med. 1997 Jul;42(7):390-2.

5. 切迫流産と言われたら、染色体異常の可能性はある?

妊娠11週6日までの妊娠早期に起こる流産のほとんどの原因は胎児の染色体異常です。染色体異常による流産は、異常が見つかった時点ですでに胎児の心拍が止まっているなど、切迫流産と診断される段階がない場合も多いです。

染色体異常は流産の大きな原因のひとつなので、ここでは染色体異常とはどのような状態なのかを説明しますが、切迫流産と言われた人では、染色体異常が原因になっている可能性は必ずしも高いとは言えません。

染色体というのは、精子や卵子の中にある微小な構造物(細胞小器官)で、細胞が生存するために欠かせない役割を持っていない。染色体に異常がない両親からも染色体異常を持つ精子や卵はある程度作られています。そのためどんな両親でも染色体異常による流産があって不思議はありません。

実際に、妊娠11週6日までの流産に至った場合に胎盤の一部の組織である絨毛(じゅうもう)を検査した結果、約50%から60%が染色体異常が原因であることが分かっています。

流産の原因になるような染色体異常がある場合、残念ながら自然に流産してしまう可能性が高いです。そのような染色体異常がないか検査したいと思う人もいるかもしれませんが、実際には妊娠初期の検査で流産を予見することは難しいです。

切迫流産と診断された後で妊娠継続できた場合には、多くの場合は流産の原因になるような染色体異常がないと考えられます(染色体異常のある赤ちゃんでも、染色体異常の種類によっては生まれてくることができる場合もあります)。状態に応じて妊娠のケアを続け、出産を目指します。