腎盂腎炎(腎盂炎)の検査:尿検査・血液検査・細菌検査など
腎盂腎炎を診断するには身体診察に加えていくつかの検査を用います。ここでは検査の内容に加えて検査の目的や診断の方法について解説します。
目次
1. 腎盂腎炎の診察や検査の目的
診察や検査の目的は、腎盂腎炎かどうか診断することに加え、腎盂腎炎であればその原因となっている
参考文献
・青木 眞, レジデントのための
・大曲貴夫/監,
・Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition
腎盂腎炎を診断する
腎盂腎炎は腎臓の
- 腎盂腎炎が原因と考えられる症状(発熱、悪寒・戦慄、腰背部痛など)がある
- 尿の中に細菌がいる
- 尿の中に
白血球 がある - 他に症状の原因になる病気がない
これらのポイントを診察をしたり検査を用いたりすることで調べていきます。
症状は
腎盂腎炎は尿路の感染症です。尿中に細菌や白血球が確認されれば腎盂腎炎の可能性は高まります。白血球は細菌を攻撃する役割があるので、白血球が出てくる時はそこに細菌がいる疑いがあります。尿中の細菌や白血球は尿検査や
腎盂腎炎の症状があって尿から細菌や白血球が確認できたとなるとこれだけでも十分腎盂腎炎が原因で症状が起きていると診断できそうなものです。しかし、多くはないですが尿中の白血球や細菌は腎盂腎炎以外の原因でも見られることがあります。このために診察や検査を追加して他の病気が隠れていないかを確認します。腎盂腎炎が強く疑われると言われたけれどもまだいろんな場所を調べられるなと感じたら、それは医師が他の病気が隠れていないかを慎重に調べているのかもしれません。
腎盂腎炎だと思っていたら実は違う病気だったとしたら、適切な治療が遅れていることを意味します。診断は治療を進める上で大きな方向性を決めることになるのでとても重要です。どんな病気にも共通しますが、診断を正確に行うことが適切な治療につながります。
腎盂腎炎の原因となっている細菌を調べる
腎盂腎炎は細菌が原因になることがほとんどです。細菌感染に対しては
腎盂腎炎が起こる背景を調べる
腎盂腎炎のほとんどは急性腎盂腎炎という種類のものです。この解説ページでも急性腎盂腎炎のことを腎盂腎炎として解説しています。
急性腎盂腎炎は単純性腎盂腎炎と複雑性腎盂腎炎の2つに分けることができます。
複雑性腎盂腎炎は背景に腎盂腎炎を起こす原因があります。
【急性腎盂腎炎の分類】
| 単純性腎盂腎炎 | 複雑性腎盂腎炎 |
|
閉経前の女性 妊娠していない 尿路に解剖学的な異常がない |
単純性腎盂腎炎以外 |
腎盂腎炎を2つに分類する理由は、治療の方針が異なることがあるからです。
- 複雑性腎盂腎炎では抗菌薬の選択に工夫が必要なことがある
- 複雑性腎盂腎炎では尿の流れを改善するために特殊な処置をすることがある
単純性腎盂腎炎に比べて複雑性腎盂腎炎は治療に注意が必要です。単純性腎盂腎炎は原因を起こす菌は予想しやすいです。これに対して複雑性腎盂腎炎の原因となる最近は様々なので抗菌薬の選択に工夫が必要なことがあります。つまり複雑性腎盂腎炎は単純性腎盂腎炎に比べて治療が難しいことが多いのです。
治療の方針が異なる可能性があるために腎盂腎炎は診察や検査を行って単純性腎盂腎炎か複雑性腎盂腎炎かを診断しておく必要があります。
2. 腎盂腎炎にはどんな検査を用いるのか?
腎盂腎炎の診察や検査の目的について解説しました。次は目的を達するためにはどんな検査を用いるかを解説していきたいと思います。腎盂腎炎に用いる診察や検査は以下のものになります。
- 診察
- 問診
- 身体診察
- 尿検査
- 血液検査
- 細菌検査
- 尿の塗抹検査
- 尿の
培養検査 - 血液の培養検査
- 画像検査
超音波検査 CT 検査
これらの検査を用いて腎盂腎炎の診断や原因となっている細菌、尿路の異常の有無などを調べていきます。次にそれぞれの検査について解説していきます。
3. 腎盂腎炎を疑った時の診察
腎盂腎炎の診察は問診と身体診察を用います。診察によって症状を正確に把握したり他の病気の可能性の有無などについて調べることができます。
問診
問診は症状についての詳細な状態を把握したり他の病気の可能性を除外したりするのに有効です。以下は問診の例です。
- どんな症状があるか
- 症状はいつからか
- 症状は一定か、よくなったり悪くなったりしていないか
- 症状に対して市販薬などを内服したか
- 過去に同じ様な症状を経験したことがあるか
- 治療中の持病はあるか
- 排尿や排便に変わったところはないか
- 持病がある場合には内服中の薬の種類
- 妊娠の有無や性生活について
腎盂腎炎の症状は発熱や悪寒・戦慄、腰背部痛、吐き気・嘔吐などですが、これらの症状は腎盂腎炎以外の病気でも現れることがあります。このために様々な問診を使って他の病気の可能性を除外したり診断のあたりをつけます。
身体診察
身体診察の目的は問診と同じですが、医師が触ったり
腎盂腎炎の診察は難しいものです。腎盂腎炎の症状からは多くの病気が推定されます。このために全身のあらゆる部位を診察して他の病気の可能性を除外したりします。以下ではいくつかの身体診察の例について解説します。
バイタルサイン の測定- 頭部の身体診察
- 胸部の身体診察
- 腹部の身体診察
- 肛門・直腸の診察
どんな病気の診察でもバイタルサインの測定は欠かすことができません。バイタルサインは生命徴候という意味の医学用語です。一般的にバイタルサインは脈拍数・呼吸数・体温・血圧・意識レベルの5つのことを指します。また身体に酸素が行き渡っているかを調べる酸素飽和度も同様に扱うことが多いです。
バイタルサインは命の危険が迫っていないかを反映します。また全身状態を把握するのにも役立ちます。
腎盂腎炎が起きている腎臓は腹部の臓器なので腹部だけ診察すればいいかというとそうではありません。症状の原因は腎盂腎炎ではないかもしれないですし、腎盂腎炎と他の病気が同時に
頭部・胸部・腹部の身体診察を漏れがないように行います。身体診察では以下のような方法を用いて身体に異常がないかを調べていきます。
- 視診:目で観察
- 聴診:聴診器で音を聞く
- 打診:身体を指で軽く叩く
- 触診:身体を触れたり押したりする
腎盂腎炎に特徴的なのは、腎臓の位置にあたる背中の位置で軽く叩くと痛みが増強するというものがあります。この
全身を身体診察することで症状の原因になっている臓器や病気の特定を行います。身体診察の結果とこの後に行う検査を総合的に判断して診断を導き出します。
4. 腎盂腎炎を疑ったときに行う尿検査
腎盂腎炎を診断する上で尿検査は重要な検査の一つです。
尿検査には尿定性(尿定性検査)と尿沈渣(にょうちんさ)の2つの種類があります。2つでは調べられるものが異なります。
- 尿定性:白血球やタンパク質、血液などの有無や程度を調べる検査
- 尿沈渣:尿を機械で遠心分離して沈殿したものを顕微鏡を用いて観察する
尿定性は短時間で結果が判明する点が優れています。
尿定性検査では白血球や亜硝酸塩の有無を知ることができ腎盂腎炎の診断の助けになります。尿の状態を大まかに知ると言う意味で便利な尿定性検査ですが、調べられる項目が限られているので尿の状態を詳しく調べることはできません。尿の状態を詳しく調べるには尿沈渣の方が向いています。
尿沈渣では尿を機械で遠心分離して沈殿したものを顕微鏡で観察する検査です。尿を人の目で観察するので
5. 腎盂腎炎を疑ったときに行う血液検査
腎盂腎炎で血液検査を行う理由は
- 炎症の程度
- 臓器(腎臓・肝臓など)の機能
- 脱水の有無
炎症の程度や臓器の機能、脱水の有無などを調べることで全身の状態や病気の重症度を判断する材料になったり治療方針を決めることに役立ったりします。例えば脱水が著しいことがわかったときには点滴による水分補給が行われたり入院が必要であると判断できたりします。
6. 腎盂腎炎を疑ったときに行う細菌検査
腎盂腎炎に限らず感染症の検査の中で細菌検査は重要な検査の一つです。腎盂腎炎を疑った時に行う細菌検査は主に3つあります。
- 尿の塗抹検査
- 尿の培養検査
- 血液の培養検査
以下でそれぞれの特徴について解説します。
尿の塗抹検査(とまつけんさ)
塗抹検査は感染が疑われる
塗抹検査は10-30分程度で結果がわかるので治療に取り掛かる前に検査結果をしることができます。塗抹検査は細菌の大まかな種類をしることができます。
塗抹検査で細菌の名前やどの抗菌薬が適しているかまでは知ることはできませんが、グラム染色という方法と細菌の形から大きく4つに分類したもののうちどれに該当するかは知ることができます。4つの分類は以下のようになります。
- グラム陽性球菌
- グラム陽性桿菌
- グラム陰性球菌
- グラム陰性桿菌
この分類の意味する所は、グラム染色を行ったときの陽性か陰性かという点と細菌の形(球形か細長いか)という2つの基準を用いて細菌を4つのグループに分けるということです。他に白血球が細菌を貪食している(食べている)様子を観察することができます。
白血球は身体を細菌などの外敵から守る細胞です。白血球に貪食されている細菌があるならばその細菌が感染の原因となっていると推測することができます。
尿の塗抹検査は腎盂腎炎の診断をするのに役立ちかつ治療の方向性を大きく見失わないために大切な検査です。
尿の培養検査(ばいようけんさ)
培養検査は検体(ここでは尿)を細菌が育ちやすい環境下に置いて、検体に含まれている細菌を発育させて調べる検査です。塗抹検査に比べて細菌の数が増えるので細菌の名前や抗菌薬の効果まで調べることができます。ただし細菌が増殖するまでには時間がかかります。
培養検査で判明した結果をもとにして最適な抗菌薬に変更することができます。
血液の培養検査(ばいようけんさ)
血液の培養検査は血液の中に細菌がいるかを調べる検査です。尿の培養検査と同様に検体(ここでは血液)を細菌が育ちやすい環境下に置いて調べます。腎盂腎炎は血液中に細菌が侵入しやすいことでも知られています。腎盂腎炎を疑った多くの場合に尿の
血液の培養検査からは感染の原因になっている細菌を知ることができ、最も効果的な抗菌薬を選択することができます。
7. 腎盂腎炎で用いる画像検査
腎盂腎炎では、腎盂腎炎の原因の有無や他の病気が隠れていないかを調べるために画像検査を用います。最も多く用いられる画像検査として
腹部超音波検査
腹部超音波検査は、超音波という人間の耳には聞こえない音波を利用した検査です。超音波検査は
超音波を体に当てると、超音波の跳ね返りから体の中の様子を画像で観察できます。腎盂腎炎を疑ったときには超音波検査が有用です。超音波検査では尿の流れが悪くなって腎盂が膨らんでいる様子(水腎症)や腎膿瘍への進展の有無などを観察することができます。
腎臓の形態をしらべるのに有用な超音波検査ですが、超音波検査だけでは腎盂腎炎と診断することはできません。腹部超音波検査では他の腹部の臓器も観察することができるので、腎盂腎炎以外の病気が隠れていないかを調べることにも有用です。
CT検査
CT検査は放射線を使った検査です。
CT検査では超音波検査と同様に腎臓・腎盂・
腎盂腎炎が起きていると腎臓が大きくなっている様子(
必要に応じて
CT検査では様々な情報を得られますが、腎盂腎炎の診断をする上で必須な検査ではありません。CT検査は放射線を用いるので被曝のリスクがあります。したがってCT検査を行う利益が高いと考えられる場合のみに用いられます。