しきゅうないまくしょう(ちょこれーとのうほうをふくむ)
子宮内膜症(チョコレート嚢胞を含む)
子宮内膜が子宮以外の場所にできる病気。月経のたびに強くなる腹痛、性交時・排便時の痛みなどを起こす。
13人の医師がチェック 217回の改訂 最終更新: 2025.11.26

子宮内膜症の症状:出血量が多い、腹痛、性交痛など

子宮内膜症の症状として月経時の出血が多くなったり(過多月経)、月経時に強烈な腹痛(月経困難症)が出たりすることがあります。子宮内膜症はできる場所などで症状が異なったりすることがあります。

1. 子宮内膜症は症状をきっかけに見つかることが多い

日本産婦人科学会の生殖・内分泌委員会の調査によると、68.3%の人がなんらかの症状をきっかけにして子宮内膜症の診断を受けています。

診断のきっかけになった症状の内訳は、月経困難症が56.2%、過多月経が28.1%でした。月経困難症は生理(月経)に伴う症状が日常生活にも影響がでるほど重いこと、過多月経は月経時の出血が多いことです。

参考文献:生殖・内分泌委員会, 報告, 日産婦, 2015;67(6):1493-1511

2. 月経困難症の症状:腹痛、腰痛、排便通、性交痛

子宮内膜症はいくつかの痛みの原因になります。

  • 月経時の痛み
    • 腹痛
    • 腰痛
  • 慢性骨盤痛
    • 腹痛
    • 腰痛
    • 排便痛
  • 性交痛

子宮内膜症の主な症状は、月経(生理)時の強い腹痛や腰痛です。日常生活にも影響するほど症状が強い場合を月経困難症いいます。

また、子宮内膜症では月経時以外にも腹痛を生じることがあります。これは、子宮内膜症が腹腔(ふくくう)で癒着(ゆちゃく)を起こすためです。癒着とは、炎症などにより本来はくっついていない臓器同士がくっついてしまう状態です。腹腔で癒着が起きると、腹痛や便秘の原因になります。

さらに、子宮内膜症は性交時に強い痛みのを引き起こすことがあります。これは、膣の奥にあるダグラス窩(か)という場所に子宮内膜ができたり、その影響で癒着がおきたりすることによるものです。ダグラス窩は直腸と隣り合っているので、直腸の癒着などによって排便痛が起こることもあります。

次にそれぞれの症状について詳しくみていきます。

3. 腹痛

腹痛は子宮内膜症の症状の一つです。子宮内膜症が原因の腹痛は2つの種類があります。

一つは月経(生理)時に生じる痛みです。子宮内膜症が起こると本来は子宮にある子宮内膜が他の場所で生着し、子宮内膜が通常より増えた状態になっています。月経時には子宮内膜から子宮を収縮させる物質(プロスタグランジン)が放出されます。子宮内膜症では子宮内膜が増えている分プロスタグランジンの量も増え、子宮の収縮が過剰に起こり激しい下腹部痛につながります。

もう一つは、月経周期によらない腹痛です。子宮以外にできた子宮内膜も月経のたびに出血をします。出血が起きてそのまま血液が溜まると腸などお腹の中の臓器が癒着します。癒着は腹痛の原因になります。

4. 腰痛

子宮内膜症による腰痛は子宮内膜症による癒着や炎症などが原因と考えられています。子宮内膜症は本来は子宮にしかない子宮内膜が他の場所に生着することが原因で様々な症状が現れます。子宮内膜症がお腹の中の腹腔(ふくくう)というスペースに発生し背中に近い場所で癒着や炎症を起こすと、腰痛の原因になることがあります。

女性のすべての腰痛が子宮内膜症を原因とするわけではありません。安静にすると腰痛が和らいだりする場合は筋肉や骨を原因とする可能性が高いと考えられます。しかし腰痛に加えて月経のときの強い腹痛や、子宮内膜症を疑わせる症状が他にもある場合は子宮内膜症が腰痛の原因かもしれませんので、整形外科だけでなく婦人科も受診して詳しく調べることが大事です。

5. 性交痛

子宮内膜がダグラス窩に発生すると性交痛の原因になります。ダグラス窩は子宮と直腸の隙間にできるくぼんだ場所です。ダグラス窩は膣の奥に位置します。このため性交の影響がダグラス窩に及び痛みの原因になると考えられています。

参考文献:武内裕之, ダグラス窩閉塞を伴う子宮内膜症の外科的治療, 日産婦誌. 2002;54(9):403-408

6. 便秘

子宮内膜症が便秘の原因になることがあります。

子宮内膜症はお腹の中の腹腔という場所にできることがあります。腹腔は腸などのお腹の中にある臓器の隙間です。腹腔の中に子宮内膜症ができると周りの臓器が癒着や炎症を起こします。腸に癒着や炎症が起きると腸の動きが悪くなり、便秘などの症状が現れます。

7. 腸閉塞

多くはありませんが腸の中(食べ物が通る側)に子宮内膜症ができることがあります。「腸管子宮内膜症」といいます。

腸管子宮内膜症の症状は腹痛や下血(排便時の出血)などです。また腸管子宮内膜症は腸の壁の中にできることがあります。腸管子宮内膜症が腸の壁の中で大きくなると腸の中の流れを妨げます。腸の流れが悪くなって詰まると腸閉塞という状態になります。

腸閉塞を起こすような症状が重い腸管子宮内膜症は手術で病気の部分を腸ごと切り取って治療します。病気の部分を切り取った後、腸と腸を繋ぎ直します。

腸管子宮内膜症は多くはありませんが、重い症状の原因になることがあります。腹痛に加えて下血などの症状がある場合には、重い腸炎やその他の緊急事態の可能性があります。すみやかに医療機関を受診することが大事です。

参考文献 ・永吉絹子,他, 腸管子宮内膜症に対する腹腔鏡手術の経験, 日本消化器外科学会誌.2016;49(8):762-771 J Minim Invasive Gynecol.2007;14:113-115

8. 頻尿

子宮内膜症が膀胱の中や周囲にできると排尿に影響を与えることがあります。膀胱は尿を溜める臓器で、子宮の前側にあります。子宮内膜症が膀胱の中にできた場合は、血尿頻尿の原因になります。膀胱内にできた子宮内膜症は内視鏡治療や手術で治療します。子宮内膜症が膀胱の周りにできて癒着や炎症を起こすと、尿が出にくくなったり頻尿(ひんにょう)が起きたりします

9. 貧血

子宮内膜症により貧血がおきることがあります。ここでいう貧血は、意識が遠のくといった症状のことではなく、医学的な意味での貧血のことで、血液中のヘモグロビン濃度の低下をことを指します。女性ではヘモグロビン濃度が12g/dL未満(男性では13g/dL未満)の人を貧血と診断します。

子宮内膜症の症状に過多月経不正出血があります。過多月経は月経時の出血が多いこと、不正出血は月経と関係なく性器から出血することです。体内で作られる血液量よりも出血量が上回ると、ヘモグロビンは減っていきます。ヘモグロビンがある程度失われると貧血になります。貧血がかなり進むと、だるさやめまいなどの症状がでることがあります。

子宮内膜症が原因の貧血に対する治療

貧血はヘモグロビンが減少した状態ですので、ヘモグロビンを増やすことが治療になります。具体的にはヘモグロビンの材料である鉄剤を飲むことで貧血の改善が期待できます。持続的に出血をしている場合は止血効果のある飲み薬なども合わせて飲みます。

貧血の状態が重い場合、鉄剤や止血剤の内服は根本的な解決にはなりません。手術や薬などによって、貧血の原因となっている子宮内膜症の治療を検討します。

10. 不妊

子宮内膜症は不妊症の要因として知られています。実際に、子宮内膜症の診断を受けた人の約半数が不妊症です。また、原因がわからない不妊症の人を調べると、高い確率で子宮内膜症がみつかります。子宮内膜症がどのように不妊症を引き起こすのかはまだ完全には解明されてはいませんが、いくつかの仮説があります。

参考文献 ・日産婦誌.2011;63:27-36 ・原田省, 子宮内膜症と不妊症, 日産婦誌.2009;61(9):345-348

卵巣・卵管機能の低下

子宮内膜症が進行すると癒着(ゆちゃく)の原因になります。癒着は本来とは異なる形で臓器と臓器がくっつくことです。重い癒着がおきると臓器の機能が低下したり痛みなどの原因になります。

骨盤の中や卵巣に子宮内膜症が起きると卵巣や卵管が他の臓器に癒着してその働きが低下することがあります。卵巣は卵子が成熟する場所で、卵管は受精が起きたり受精した卵子が子宮へ移動するための通路になります。卵巣や卵管に異常が起きると妊娠の妨げになります。

腹水(ふくすい)の増加

お腹の中には腹腔というスペースがあります。腹腔は腸などの臓器がある空間で、腹水と呼ばれる水分がもともと少量存在しています。腹水はお腹の中で炎症が起きたりすると多くなります。

子宮内膜症がお腹の中で起きると腹水の量が増加します。腹水の量が増加すると精子や受精卵に対して悪影響を及ぼし、不妊症の原因になると考えられています。

11. 子宮内膜症は閉経すると症状が軽くなる

子宮内膜症は月経にともなって症状があらわれます。そのため、閉経後は子宮内膜症の症状が軽くなり、なかにはほとんど症状が出なくなる人もいます。

子宮内膜症のホルモン療法では薬を使って閉経と同じような状態にすることができます。薬を使って身体を閉経状態に近くすることで、症状が大幅によくなることがあります。

12. 子宮内膜症と似た症状があらわれる病気

子宮内膜症の症状は子宮内膜症の人全員にあらわれるわけではありません。また、他の病気が原因で起きることもあります。

月経困難症、過多月経、不正出血

子宮内膜症では月経に関連した症状があらわれます。月経に関連した症状は、月経困難症過多月経不正出血などです。このような症状は子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)や子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)でもあらわれます。

また、不正出血の原因には更年期によるエストロゲンの減少・妊娠・がん子宮内膜がん子宮頸がんなどもあります。

慢性的な痛み

慢性骨盤痛と表現される子宮内膜症の痛みでは、下腹部痛や腰痛・腹痛・排便痛などが典型的とされます。これらは月経時に関係なく症状が現れます。子宮内膜症で慢性骨盤痛が現れるのは骨盤の中で癒着や炎症が起きることが原因と考えられています。

子宮筋腫などの他の子宮の病気も慢性骨盤痛の原因になります。他には筋肉や神経などを原因とする整形外科で扱う病気腸の病気などにも注意が必要です。

不妊症

子宮内膜症は不妊症の原因の一つで、子宮内膜症の人のうち約半数で不妊症が現れるとの報告もあります。

子宮内膜症が不妊症の原因かを調べるのと併行して、他に不妊症の原因がないかを調べます。例えば男性は精液検査などで精子の状態を調べ、女性は卵管の形排卵に問題がないかなどを調べます。

子宮内膜症が原因の可能性がかなり高いと判断された時は、腹腔鏡(ふくくうきょう)検査をして診断と同時に治療をします。子宮内膜症による不妊症の手術として、腹腔の癒着(ゆちゃく)を剥がすなどの方法があります。

性交痛

性交痛は性交を始めようとするときや性交中に起こる痛みのことです。子宮内膜症が膣の近くに癒着や炎症を起こすことが原因で現れる症状です。性交痛は子宮内膜症以外でもクラミジアなどの感染症でもあらわれることがあります。

便秘

子宮内膜症はお腹の中の腹腔という場所で炎症を起こすことがあります。腹腔は腸などの臓器の隙間です。腹腔に炎症が起きると腸と腸などが癒着します。癒着が起きると腸の動きが悪くなって排便に影響し、便秘の原因になります。

便秘の原因には他にも、大腸がんなどの大腸の病気や食事、ストレスなど様々なものがあります。他の症状なども参考にしながら大腸カメラなどの検査を追加で検討します。

頻尿(ひんにょう)・尿が出にくい

膀胱は尿を溜めておく臓器で子宮のお腹側に接しています。子宮内膜症が膀胱の近くにできて膀胱に影響すると、頻尿の症状や尿が出にくくなることがあります。

頻尿の症状は過活動膀胱膀胱炎などの膀胱の病気を原因とすることが多いです。検査では、過活動膀胱膀胱炎が原因にないかも合わせて調べます。