しきゅうないまくしょう(ちょこれーとのうほうをふくむ)
子宮内膜症(チョコレート嚢胞を含む)
子宮内膜が子宮以外の場所にできる病気。月経のたびに強くなる腹痛、性交時・排便時の痛みなどを起こす。
13人の医師がチェック 217回の改訂 最終更新: 2025.11.26

チョコレート嚢胞のよくある疑問

卵巣は子宮内膜症ができやすい場所の一つです。卵巣に発生した子宮内膜症により、チョコレート嚢胞(卵巣子宮内膜症性嚢胞)ができます。このページでは、治療法や不妊との関係など、チョコレート嚢胞に関するよくある疑問について説明します。

1. 卵巣にできる子宮内膜症がチョコレート嚢胞(のうほう)?

子宮にしかないはずの子宮内膜が子宮以外の場所に発生して、それが原因でさまざまな症状があらわれる病気を子宮内膜症といいます。卵巣に子宮内膜症ができると、チョコレート嚢胞(のうほう)と呼ばれる状態になることがあります。卵巣チョコレート嚢胞または卵巣子宮内膜症性嚢胞ともいいます。

嚢胞は液体の入った袋状のできもののことです。チョコレート嚢胞はチョコレート嚢腫(のうしゅ)と呼ばれることもありますが2つに違いはありません。

チョコレート嚢胞の名前の由来

チョコレート嚢胞の名前の由来はその見た目です

チョコレート嚢胞は卵巣にできた子宮内膜症です。そのため、月経時には子宮内膜と同じように出血します。しかし、卵巣で出血が起きても体の外に血液が流れ出ることがありません。そのため、血液は溜まったままになり、時間が経つと黒っぽい色に変化していきます。チョコレート嚢胞の見た目は出血のなごりです。

チョコレート嚢胞のイラスト

2. チョコレート嚢胞では卵巣が癒着(ゆちゃく)する?

チョコレート嚢胞は炎症癒着(ゆちゃく)の原因になります。癒着とは、本来はくっついていない臓器同士がくっつくことです。重い癒着が起きると臓器の機能が低下する原因になります。チョコレート嚢胞によって卵巣に癒着が起きると、卵巣の機能が低下して卵子の成熟が上手くいかずに不妊の原因になることがあります。

3. チョコレート嚢胞の原因は?

チョコレート嚢胞の原因は不明です。

チョコレート嚢胞は子宮内膜症が卵巣に発生したものです。チョコレート嚢胞の原因は他の部分にできる子宮内膜症と共通していると考えられます。子宮内膜症の発生する原因にはいくつかの説があります。

  • 月経時の出血が腹腔に逆流する
  • 腹膜が子宮内膜に変化する
  • 子宮内膜がリンパ管や血管に入り込み転移する

しかし、結論は不明です。

子宮内膜症は妊娠可能な年齢の女性のうち10%近くに発生しているとも言われます。誰に起こっても不思議のないことです。性行為や食べ物と明らかな関係はありません。

詳細は「子宮内膜症の原因」で解説しています。

参考文献:河野一郎, 子宮内膜症の発生病理, 日産婦誌:1998;50(10):345-348

4. チョコレート嚢胞の症状は?

チョコレート嚢胞は卵巣に発生した子宮内膜症です。子宮内膜症の症状は強い生理痛(月経困難症)や月経時の出血が多くなる(過多月経)、腰痛、性交痛などです。痛みや出血以外の症状に不妊症があります。

チョコレート嚢胞は症状をきっかけにして発見されることもあれば、他の病気の検査をしているときに偶然発見されることもあります。小さなチョコレート嚢胞の場合には症状があらわれないこともあります。症状がなければ治療をせずに経過観察をすることがあります。

参考文献:子宮内膜症性嚢胞(卵巣チョコレート嚢胞), 日産婦誌.2006;58(12):500-506

5. 卵巣が腫れていたらチョコレート嚢胞?

医師から「卵巣が腫れている」と説明されることがあります。卵巣が腫れる原因はいくつかあり、チョコレート嚢胞はその一つです。卵巣が腫れていても必ずしも病気ではありません。卵巣が腫れる原因について解説します。

参考文献:日本婦人科腫瘍学会ウェブサイト:卵巣腫瘍

排卵によるもの

卵子が成熟して卵巣から放出されることを排卵といいます。排卵の前になると卵巣が大きく見えることがあります。この現象は異常でもなんでもないので心配する必要はありません。

妊娠によるもの

妊娠するとhCGというホルモンが放出されます。hCGは妊娠を継続するために必要です。hCGが卵巣に影響して卵巣が腫れることがあります。この卵巣の腫れをルテイン嚢胞といいます。ルテイン嚢胞は病気ではありません。時間とともに小さくなりますので、治療の必要もありません。ただし、卵巣の他の腫瘍と区別が必要なので、その後の経過をしっかりと観察する必要があります。

卵巣腫瘍によるもの

卵巣にできる腫瘍(しゅよう)は多くの種類があります。良性腫瘍悪性腫瘍、その間の特徴をもつ境界悪性腫瘍に分類されます。

良性腫瘍は転移や他の臓器を破壊して大きくなることはありません。しかし、その場で大きくなり続けるので症状などを参考にして手術を検討することがあります。

境界悪性腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍の中間的な性質を持ちます。診断は難しく、腫瘍の一部を取り出してそれを顕微鏡でみる検査(病理検査)、もしくは手術によって腫瘍を切除して調べます。経過は悪性腫瘍に比べて良好です

悪性腫瘍はがんのことです。卵巣の悪性腫瘍のほとんどは卵巣がんです。卵巣がんは進行すると転移や浸潤(他の臓器を破壊しながら入り込むこと)を起こし、命を脅かすことがあるので手術で摘出することを検討します。必要に応じて抗がん剤による治療を行います。

6. 卵巣が腫れていると言われた場合にはどうしたらよいのか?

卵巣が腫れる原因はさまざまです。中には卵巣がんのような悪性腫瘍もありますが、数として多くはありません。卵巣が腫れているといわれても必要以上に心配になることはありません。医師からの説明をしっかりと聞いて、卵巣が腫れている原因をしっかりと調べることが大事です。

7. チョコレート嚢胞の治療は?

チョコレート嚢胞の治療の目的はいくつかあります。

  • 痛みを和らげる
  • 卵巣の破裂や、ねじれを予防する 
  • 不妊症を改善する
  • 悪性腫瘍の可能性があるときは取り除く

以下ではそれぞれの目的について説明していきます。

痛みを和らげる

チョコレート嚢胞は痛みの原因になります。チョコレート嚢胞は癒着や炎症を起こし、これにより痛みが起きます。

また、チョコレート嚢胞は子宮内膜が卵巣に発生したものであり、子宮内膜は腹痛の原因になる物質(プロスタグランジン)を放出します。プロスタグランジンが過剰に放出されると子宮が過剰に収縮して腹痛の原因になります。

チョコレート嚢胞を治療することでプロスタグランジンの放出を抑えることができ、月経時の腹痛が和らぎます。

卵巣の破裂や、ねじれを予防する

チョコレート嚢胞が大きくなると、卵巣がねじれたり嚢胞が破裂したりする危険性が高まります。ねじれや破裂には緊急での治療が必要です。

このような事態を防ぐため、大きなチョコレート嚢胞は手術で摘出することを検討します。具体的には、嚢胞の大きさが6cm以上になると卵巣がねじれる危険性が高まります。チョコレート嚢胞の大きさは、治療をするかどうかの目安にされます。

参考文献 ・産科婦人科学会, 産婦人科医会/編, 産婦人科 診療ガイドライン―婦人科外来編2014

不妊症を改善する

チョコレート嚢胞は不妊症の原因になることがあります。

チョコレート嚢胞の治療にはホルモン剤を使った薬物療法と手術があります。不妊症に効果が期待できるのは手術です。手術では腹腔鏡などを使いチョコレート嚢胞の部分だけを切り取り卵巣を温存します。

悪性腫瘍の可能性があるときは取り除く

チョコレート嚢胞は悪性腫瘍と区別が難しい場合があります。

チョコレート嚢胞を経過観察している最中に急に大きくなったりする場合は、悪性腫瘍の可能性があります。

また、チョコレート嚢胞と卵巣がんの一部(明細胞がん、類内膜腺がん)は同時に存在することがあります。40歳を超えて発見された、あるいは10cmを超えたチョコレート嚢胞は、卵巣がんが同時にある可能性が高くなります。チョコレート嚢胞と悪性腫瘍の区別が難しい時には、手術で卵巣をとりだして診断します

参考文献 ・産科婦人科学会, 産婦人科医会/編, 産婦人科 診療ガイドライン―婦人科外来編2014

8. チョコレート嚢胞の治療は手術?

チョコレート嚢胞の治療には薬物療法と手術の2つがあります。手術が適した条件に当てはまらないときにはまず薬物療法で治療が可能です。

薬物療法

薬物療法でチョコレート嚢胞をなくすことはできませんが、適切な場面で使えば有効です。チョコレート嚢胞の薬物治療には以下のものがあります。

  • 鎮痛剤:NSAIDs(エヌセイズ)
  • 漢方薬
  • ホルモン療法
    • ピル
    • ジエノゲスト
    • LH-RHアゴニスト

チョコレート嚢胞では、月経痛、慢性的な腰痛・腹痛といった痛みを伴うことが多いです。症状が強いと日常生活に影響します。痛みの緩和には鎮痛剤が有効です。なかでもNSAIDs(エヌセイズ)という薬に効果があります。ただし、NSAIDsを長期間使い続けると、腎臓の機能低下や胃潰瘍の原因になります。鎮痛剤はあくまでも症状を抑える薬なので、他の治療を同時に使ったり、期間を決めて使ったりすることが大事です。

漢方薬は月経時の腹痛や不快感などに効果を発揮します。チョコレート嚢胞に効果のある漢方薬は桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)、加味逍遥散(カミショウヨウサン)、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)などがあります。漢方薬の選び方は症状の強さや体力などを参考にします。

チョコレート嚢胞の症状には、月経困難症(強い月経痛など)や過多月経(月経時の出血量が多くなる)などがあります。これらの症状にはホルモン療法が有効です。

  • ピルやジエノゲスト:子宮内膜の増殖を抑えることで月経を軽くして症状を和らげ、副作用が弱いので長期に渡り使うことができます。
  • LH-RHアゴニスト:ピルや黄体ホルモンとは異なり、女性ホルモンを減らすことで効果を発揮します。LH-RHアゴニストを使うと生理が止まり閉経に近い状態(偽閉経)になります。また、チョコレート嚢胞を小さくするなどの効果があります。しかし、更年期障害のような副作用や骨がすかすかになる(骨粗鬆症(こつそしょうしょう))副作用などがあるために半年以上継続して使うことはしません。

チョコレート嚢胞の薬物療法は「子宮内膜症の薬物療法」の詳細解説も参考にしてください。

手術

チョコレート嚢胞で手術が適していると考えられるのは以下に当てはまる人です。

  • チョコレート嚢胞が原因の不妊症
  • チョコレート嚢胞が大きい
  • 強い骨盤痛
  • 悪性腫瘍が否定できない

不妊症の原因がチョコレート嚢胞の場合は手術をしてチョコレート嚢胞を取り除きます。不妊症の改善を目的とした手術では卵巣を残してチョコレート嚢胞のみを摘出します。

チョコレート嚢胞が大きいときには卵巣が捻れたり嚢胞が破裂したりする危険性が高まります。6cmを目安に手術をしてチョコレート嚢胞を取り除きます。

チョコレート嚢胞の影響が周りに強く出ると骨盤に癒着(ゆちゃく)が起きます。癒着が強いと慢性的な骨盤部の痛みを伴います。骨盤通は薬で治療しますが、症状が重いときには手術で癒着を外して症状の改善をはかります。

チョコレート嚢胞が大きい場合や急速に大きくなった場合、高齢で発症した場合は悪性腫瘍(卵巣がん)の可能性を考える必要があります。悪性が否定出来ないときには手術をしてチョコレート嚢胞を摘除します。

「子宮内膜症の手術」での解説も参考にしてください。

参考文献 ・産科婦人科学会, 産婦人科医会/編, 産婦人科 診療ガイドライン―婦人科外来編2014

9. チョコレート嚢胞は卵巣がんになる?

チョコレート嚢胞はがんではありません。チョコレート嚢胞は時間の経過とともに卵巣がんになることがあります。チョコレート嚢胞を平均で12.8年経過観察した研究によるとチョコレート嚢胞があった人のうち調査期間に卵巣がんになった割合は0.72%でした。

チョコレート嚢胞が卵巣がんになる確率は決して高くはありません。ただしチョコレート嚢胞が大きい場合や40歳以上の人は卵巣がんの危険性が高くなるとも報告されているので一部の人では注意が必要です。

参考文献 ・産科婦人科学会, 産婦人科医会/編, 産婦人科 診療ガイドライン―婦人科外来編2014 ・Int J Gynecol Cancer. 2007 Jan-Feb;17(1):37-43.

10. 大きなチョコレート嚢胞には卵巣がんが隠れている?

チョコレート嚢胞を手術をした場合に、卵巣がんが見つかることがあります。チョコレート嚢胞が大きいほど卵巣がんが同時に見つかる可能性が上がることが知られています。

チョコレート嚢胞の大きさと卵巣がんの関係について調べた研究では以下のように報告されています。

  • 10cm未満のチョコレート嚢胞に卵巣がんが見つかった人:7429人中49人、確率にして約0.7%
  • 10cm以上のチョコレート嚢胞に卵巣がんが見つかった人:826人中57人、確率にして約7%

この報告では、チョコレート嚢胞が大きくなればなるほど卵巣がんが見つかる可能性があがることも報告されています。大きなチョコレート嚢胞は手術による治療が勧められます。

参考文献 ・産科婦人科学会, 産婦人科医会/編, 産婦人科 診療ガイドライン―婦人科外来編2014

11. 40歳以上の人のチョコレート嚢胞には卵巣がんの注意が必要?

40歳以上の人のチョコレート嚢胞には卵巣がんが見つかることがあり、注意が必要といわれています。チョコレート嚢胞と診断され手術をした場合、卵巣がんが同時に見つかることがあります。これを、40歳未満の人と40歳以上の人で比べた研究があります。

  • 40歳未満のチョコレート嚢胞の人で卵巣がんが見つかった人:5404人中56人で約1%
  • 40歳以上のチョコレート嚢胞の人で卵巣がんが見つかった人:は2859人中226人で約8%

40歳以降の人でチョコレート嚢胞が見つかった場合にはより慎重に卵巣がんが隠れていないかを検討し、手術が勧められることも多いです

参考文献 ・産科婦人科学会, 産婦人科医会/編, 産婦人科 診療ガイドライン―婦人科外来編2014

12. チョコレート嚢胞は再発する?

チョコレート嚢胞の手術後の再発率は25%前後という報告があります。

再発しやすい人の傾向は、嚢胞が大きい(8cm超)、手術の前に痛みがある、嚢胞が破裂していた、などでした。

再発した場合は、再びチョコレート嚢胞の部分だけを取り除く手術、卵巣ごと取り除く手術、経過観察、薬物療法などが選択肢として考えられます。その時の状況に応じて最も望ましい治療法を医師と相談することが大事です。

参照:JSLS. 2014;18

13. チョコレート嚢胞があっても妊娠できる?

チョコレート嚢胞があっても妊娠することは可能です。チョコレート嚢胞が小さければ身体に影響を及ぼさないこともあります。チョコレート嚢胞が存在するからといって妊娠できないことは決してありません。

しかし、チョコレート嚢胞が不妊症の原因になっていると考えられる場合もあります。その場合は手術で妊娠が可能になることがあります。ただし、手術をすれば必ず妊娠できるわけではないですし、手術による危険性もあります。他に不妊症の原因がないかを含めて主治医としっかりと相談して手術をするかどうかを決めることが大事です。